この記事はEWBアドベントカレンダー2019の5日目の記事です。
4日目はhid_alma1026さんでした。6日目はhid_alma1026さんです。
EWBのマークアップを語る上で前提となる、編集トリガ(マークアップ)と組版トリガに向けての助走となります。
大前提として私は商業書籍出版に携わったことがないので 突っ込みどころがありましたら修正していきたいと思います。
著者編集者組版者
ドキュメント、特に書の形をとるものを書くにあたって、
- 書くテーマの選定
- 書くために必要な情報の収集
- 書の内容
- 書の論理構成
- 文章チェック
- 書の組版
- 外観のデザイン
これらがパッと浮かぶ工程です。テーマの選定は更に「プロデューサー」などのロールを登場させても良いかもしれませんし、外観のデザインは「装丁デザイナー」などを置くかもしれません。
工程 | 著者 | 編集者 | 組版 |
---|---|---|---|
テーマ選定 | xx | x | |
情報の収集 | xx | x | |
内容 | xx | x | |
書の論理構成 | x | xx | |
文章チェック | xx | ||
組版 | x | xx | |
外観のデザイン | x |
異論反論はあるかと思いますが、 それぞれの工程の担い手の比重が例えばこのようなものとして、 それぞれが同じソースを触らなければならない状況があるとします。
このとき、組版者はセクショニングや内容について作業を行うことはないでしょう。 であれば、組版者は組版専用のコマンドを触り、それは著者や編集者が誤って触らないコマンドで あることが望ましいですね。一方著者や編集者はセクショニングや文章内容について意図通りに出力できるようコマンドが用意されていることが望ましいわけです。 図表など補足的な情報については、著者や編集者は「どのあたりにあると良いか」 は関心がありますが、本の形にしたときの物理的・具体的な位置についてはこだわりは多くの場合はないでしょう。
書籍用のフォーマットであるEWBは、これを割と明確に分離しました。 それが「編集トリガ」と「組版トリガ」になります。これらはプレフィックスが異なり、可能な操作も異なります。編集トリガの物理的組版内容についてはまた編集が可能ですが、「意図が明確に分かる」以外の要望は組版者に委ねられるべきものでしょう。著者は素朴には組版に関わるべきでないし、組版者が内容に言及することはあまり好まれないでしょう。
明日の記事では編集トリガや組版トリガの具体例について見ていきます。
蛇足
私はドキュメントの執筆において 軽量マークアップによる執筆を推奨するスタンスを取っています。 校正補助CIの高速化の他、 執筆においてある程度論理的デザインを強制するからです。 破綻したデザインの印刷物が欲しい、素の(軽量でない)マークアップからでも 論理・物理構造を問題無くイメージできるなどの場合は問題無いでしょうが。
同人出版においては表の曖昧なロールが更に曖昧になるでしょう。 工程の区分けによって得られる見通しの良さは締切によってぐちゃぐちゃになり、 全てが破綻します*1。
今日日本語技術同人誌制作において勢力を伸ばすRe:VIEWはEWBの影響を受けた書籍制作用ツールとフォーマットです。これも後日の記事に譲りますが、ソースの配置構造などに確かに似た点がありますね。「PDFの出来が想定と違うんだが」のような呟きを同人誌即売会が近づくと散見するようになります。 同人誌制作においてロールが曖昧になると、執筆者が組版の問題にぶつかるなどの状況が 発生します。ドキュメンテーションツール全般にいえることですが、これらのツールは工程を分担しますが、飽くまでロールの分離を明確にするだけであって、他のロール自体を代行してくれる訳ではないことを留意するべきです。ロール自体を代行させたいのであれば強いAIの開発などに注力すると皆が幸せになるのかもしれません。
あるいは人、人は雇うことができるのでお薦めです。
*1:By サークル Virtual Ones代表@hid_alma1026