EWBの歴史概略(「はじめに」を引き伸ばして)
この記事はEWBアドベントカレンダー2019の2日目の記事となります。
暫くはEWBハンドブックの内容を薄く引き伸ばした内容となりますので、 本記事とEWBハンドブックを比較していただければ今後どういう記事になっていくかの 参考になるかと思われます。
予定とはずらして、2日目はEWBの歴史を書いていきます。
資料を収集する予算と期間が十分でなかったため、Wikipediaからの引用を含んでいきます。
推測的な内容も含まれますので、都度注意してお読みください。
私がEWB真っ盛りの時期に一切接点がないこともあり、何らかの関係者からの修正、補足を大変心待ちにしております。
EWBの歴史
EWBハンドブックに依れば、EWBの開発は1986年に遡ります。 といってもアスキー編集部内での工程を崩さないように文字原稿の棒打ち出力のみ サポート、とありますのでフォーマットとしてはかなり素朴なものだったと思われます。 それでも、写植での出力予想を行うことができ大幅な工程短縮になったとのこと。
Wikipedia*1 からの引用になりますが、英語圏でのマークアップ言語開発は1960年代〜1980年代に登場、進化してきました。Scribeが1980年発表、SGMLの国際標準化が1986年です。また、も1970年代〜1980年代になります。
publishing (p)の開発は1987年にj1.0のリリースですが、EWBハンドブックによれば組版エンジンにpを採用したのはEWB2.0からとのことなので、最終形である3系のハンドブックから1系のフォーマットを予想することは少し難しいでしょう。それでも、 レイアウトなどに関連する、「編集トリガ」と「組版トリガ」*2の接頭マークの分離というアイデアはこの頃のものからではないかと推測されます。
そのまま1990年登場のEWB2系の話ですが、pの出力が写研の写植機用の印画紙出力などに対応し、 そのまま出版クオリティのものを作れるレベルまで達したとあります。1990年のはバージョンj1.7 p1.0.9、縦組みへの対応が最大の特徴ですので、かなり満を持してのものであったことが伺えます。この頃からのチームとEWBチームはほぼ一緒と考えてよいのではないでしょうか。少なくともEWBコンソーシアムのお問い合わせメールアドレスはptex-staffの文字が含まれますからEWB3系は確実ですが。
1996年に登場するEWB3.0の最大の特徴はPostScriptへの対応です。印画紙への貼り込みからの脱却、面付けデータのフィルム出力が可能になるのはメジャーバージョン更新に相応しい進化です。1995年に
のバージョンがp2.0になりに対応をしていますから、この辺りの調整が内部的には大きな変化だったのではないでしょうか。この際はとなっています。グッバイ\documentstyle
。
そしての改良と合わせ1999年10月にEWB3.1がフリーソフトとして公開されます。
現在、当社の書籍の7割がEWBで作られている。
(2019年現在も稼動中という風の噂がありますね。)
さらに、多くの出版社に電子化を広めるため、企業8社と共にコンソーシアムを設立した。このコンソーシアムからも、今後さまざまな関連ツールを提供する。
EWBコンソーシアムはEWBのソースコードとLinux, FreeBSD版のバイナリ配布を行っていました。 アスキーからアスキーメディアワークスに移行した際は新URLで閲覧・情報取得可能でしたが、 いつの間にかサイト再編時に、おそらくはのページと共に消失してしましました。 2015年頃にのページを取得、保存されている方がいることから、 この頃までは存在していたものと思われます。私は2014年頃Linux環境でEWBを動かそうとしていた記憶があります。このときのソースを保存していれば……!
更に余談ですが、EWBコンソーシアムの更新情報のページ、2000年に第1回の年次総会を行ったことを記載してありますが、以後の年にはありません。ここの総会資料のPDFも誰か持っていませんでしょうか……。
話が戻ります。
3.2でPDF出力対応強化、3.3で体裁入力機能強化とあります。EWBにおける体裁入力は独自の形式に 記述していきます。生書くのは相当見通しが悪かったんでしょうね。後日の記事でも触れますが、EWBは書籍毎にこの体裁ファイルなどから都度クラスファイルが生成されます(!)。
EWBの最終版は2002年の3.3(とマイナーパッチ)となり、EWBは配布こそ続けられるもののメンテナンスされない状態となりました。更新情報の履歴を見る限り、2005年にはもう更新されていませんね。これも後日の記事になりますが、EWBのツール群にはkakasiやxemacsなどが含まれるため、他ソフトと連携するOSSの寿命などを考えさせられます。
EWBのインストール方法を載せているページのリンクから、EWBのでない部分の本体は JVM1.4系で動作するようなソフトウェアであったことが推察されます。
ちなみに「VMware Playerですぐ使える 日本語TEX&EWB組版システム」は2008年の発売ですから、既に何らかの形でのコード保存の意図があったと考えられます。ソースコードも入れてあれば良かったのに……。
EWBの将来
EWBコンソーシアムのページに気になる文言があったので記載しておきます。
<EWBシステムの将来>
EWBは現在もアスキーの主力製作システムとして使用されており、PDFへの対応や、XMLとの親和性の向上など、引き続き開発が進められています。今後も、さらに高機能で使いやすいシステムに発展して行くでしょう。
これは期待大ですね!
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良いタイミングがあったら他の関連物と合わせて年表化したいですね。
EWBアドベントカレンダー2019、3日目の記事は@hid_alma1026さんです*3!